ニチメンを退職後、経営学部教授としてお世話になっていた東京経済大学同窓会誌「東京経済」2022年7月号で溝江博三先輩の訃報を知り心よりお悔やみ申し上げる次第である。
溝江先輩には50年前のニチメンニューデリ駐在時代から40年前のカルガリー出張員時代に大変お世話になった。その後、さらに東京経済大学のご縁でも二重のご縁ができ親しくご指導を頂いた。ニューデリ駐在時、ブラジル向けバングラデッシュ製砂糖用ジュートバッグ入札では、元ダッカ駐在員として活躍されたとのことで、ニューデリにご出張の際、種々ご指導を頂いた。これが溝江氏との最初の出会いであった。

筆者はバグダッド駐在、ベイルート長期出張、ニューデリ駐在、ブラジル・リオデジャネイロ支店、サンパウロ本店駐在を経て12年ぶりに帰国。業務部米州課長を拝命。当時の金田業務本部管掌専務のご指示で、カナダ・カルガリー出張を命じられた。主目的はニチメンのエネルギービジネス開拓のためカナダの石油、ガスビジネスへの介入を図ることだった。
たまたまマレーシア・国営ペトロナス公団向けガスパイプライン建設大型商談に際し、カルガリーのガスエンジニアリング会社・NOVA社と交渉し、ペトロナス向け代理権を取得せよとの宮本取締役機械本部長よりの指示が舞い込んだ。
その窓口取得交渉支援に東京機械プラント本部から溝江博三先輩が派遣され、二人で交渉の末、窓口取得に成功。ペトロナス向け100億円のガス・イプライン敷設工事落札に成功した。筆者はその後、ニュ―ヨーク駐在帰国後、思うところあり、早期退職し、愛知学院大学商学部教授の公募に応募、合格。6年後、東京経済大学に新設の経営学部・流通マーケテイング学科、及び経営大学院教授として東京経済大学にお世話になることになった。

同大学貿易研究会顧問を仰せつかり、貿易研究会が開催された。その会合にOBとして参加していた溝江先輩に再会。不思議なご縁を感じた。溝江氏は東京経済大学英語研究会ESSで英語を研鑚。さらにニチメン豪州にも駐在経験あり、その英語力は抜群であった。そのこともあり、東京経済大学貿易英語の講師をお願いした。先輩のその流ちょうな英語力に後輩の学生諸君は強い感銘を受け、先輩を見習いたいと英語の勉強に精出した。
2006年3月、筆者の退官記念講演のあとの送別会で、溝江氏が結成したという東京経済大学楽団の演奏をバックにお得意の英語で、名曲の数々を熱唱いただいたことを今もありありと思い出す。溝江氏は昭和32年ニチメン入社で、筆者の2年先輩でお世話になった。
ニチメン社友会の席で会うと、豪州駐在時好きになったという赤ワインのグラスを片手に『中川さん元気か。カルガリー時代が懐かしいね』と楽天的で、朗らかな笑顔でいつも声をかけられていたことを思い出す。溝江博三先輩 どうぞ安らかにお休みください。合掌

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