自由主義と民主主義は違う。自由主義では各人が無限の自由をもつが、民主主義では各人が1個の自由をもつ。自由主義下では、民主主義の重要な要素である平等や博愛が無視されることが多く、とくに新自由主義下では、資本の横暴による人権侵害が増えたり、経済的な格差が増えたりする。また権利を強調するあまりに、憲法が定める勤労・教育・納税などの義務や公共の福祉(憲法22条・民法1条)を軽視する国民が増える。自由主義は民主主義の反意語でもある。自由の女神像を誇る米国での人種差別や所得格差の激しい現状を見ると、米国は自由主義国・自由主義陣営の一国ではあるが、民主主義国としては一流ではない。この点は現在の日本も同様である。
今西錦司の「棲み分けの進化論」を人類社会に適応して考えると、個人が属する部分社会、とりわけ「国家」の統治形態の環境適応性・持続可能性の有無が、個人の生存(環境適応と生命維持)に大きな影響を与える。中国がソ連邦以来成功しない共産党独裁を脱して民主主義政権に移るには、中国による孫文の三民主義(民族主義・民生主義・民権主義)への理解が必要である。民族主義は当時、列強の侵略から中国を守るために漢民族の団結を訴えたものだが、多くの他民族を国内に抱える形となった現在の中国では、国内に住む他民族の民生と民権とを尊重する、進化した三民主義を実行しないと、現在の米国と同じような状態に陥ってしまうであろう。

コーヒーブレイク  新しい散歩道

コロナ禍さなかの四月、つれづれに日記でも書くつもりで、四月始まりの日記帳を買った。先勝・先負・大安・仏滅・友引・赤口といった字がすぐ目に入ったので、先勝は朝に運動して午後休む・先負はその反対・大安は一日を楽しく・仏滅は一日を静かに・友引は一日を友人家族と過ごす・赤口は赤い口いっぱいにご馳走を頂くと勝手に決め、その日、先負の午後にさっそくそれを実行した。
JR・山陽電車垂水駅の真北にある郵便局から右手、東側の公園沿いの坂道を登ると、禅寺の前に出る。そこから左手・西へ道を採れば再び上り坂になり、フォレストという介護付き老人ホームの前に出る。太陽の広場という標識があり、一帯は四月初めに桜が満開となる。そこをさらに北に登って、突き当りの階段を避けて道を左手に選び、山裾の公園下を迂回して西へ行くと、緩やかな上り坂になり大阪湾・淡路島・明石海峡が見渡せる。片道10分・往復20分の登り降りで、運動効率が良い。コロナ下で見つけた新しい散歩道である。コロナ下で密地への外出を自粛した間、私は毎日午後の散歩にここを歩いた。毎日が先負の三か月であった。(2021.4-6)