家庭内の話で恐れ入ります。
私の次男は、学研プラスで辞典編集室長を任されておりましたが、「スターウオーズ英和辞典」全3巻などのヒットを通じて、辞典部門の営業成績も上がったため、その手腕を見込まれて数年前から「図鑑」編集室長も兼任することになりました。
別に二つの部門を兼任したからと言って、給料が上がるわけでもなし、忙しさが倍になっただけです。

ところで、息子はアメリカから帰国したころから集英社の漫画雑誌「少年ジャンプ」のとりことなり、当時連載されていた「キン肉マン」という漫画の超人キャラクター募集に応募して,ジャンクマンなる超人を漫画で採用してもらうようになりました。小学6年生のころには、ついに友人と二人で少年ジャンプの編集室を訪問、それまでは漫画家志望だったのを切り替えて、編集という仕事に興味を持つようになりました。

時は経て息子は、大学を卒業して集英社ならぬ学研に就職が決まりました。
配属されたのが、50代のおじさんばかりいる「辞典編集部」。学研に入社して、なにかスポーツ雑誌の編集者となり、海外の一流選手とのインタビューをものにしたいと考えていた彼は、辞典編集部というのがどんなに地味で将来性のない部門かと、見るも哀れに落ち込んでいました。

三浦しおんの「舟を編む」という小説か映画をご覧になった方は、ご存知と思いますが、
出版社の中でも辞典編集部というのは発展性のない骨董品みたいな部門で、息子も私に映画のビデオをプレゼントしてくれて、実態も映画そっくりだから見ておいてくれと言っておりました。
しかし、息子は創意工夫して、英和辞典の表紙にディズニーキャラクターを使用したり
スターウオーズのキャラクターを採用したりして辞書を単なる勉強道具からファッションアイテムに変身させ、徐々に赤字解消、ついにはアメリカの、ルーカスフィルムまで出張して「スターウオーズ英和辞典」の出版許可を取ってきました。
不良在庫を抱えて万年赤字部門だった辞典編集部もついにコンスタントに黒字を出す部門になりました。

このころは、すでに知人を介して「キン肉マン」の作者「ゆでたまご先生」との知遇を得ていた息子は「スターウオーズ英和辞典」をゆでたまご先生にプレゼントしたところ、凄く気に入られて先生から、キン肉マンに登場する超人たちについても同じような辞典を作ってくれないかとの依頼がありました。ちなみに「ゆでたまご」は原作者の嶋田隆司先生の筆名です。
キン肉マンは「スターウオーズ」と違って日本の漫画なので「辞典化」は無理と考えた息子は、超人たちを一堂に集めた図鑑にすることを提案、原作者先生の許可を得ました。

学研プラスの公式ブログにも出ておりますが、「キン肉マン」が「週刊少年ジャンプ」に連載開始されたのが、1979年、今年2019年で丁度40年になります。同時に学研の図鑑も来年で創刊50年になるので、この両者のコラボにより「学研の図鑑 キン肉マン「超人」」なるものを目指して編集に取り掛かりました。
キン肉マンは連載開始から、今日まで延々と続いており、そこの登場する超人たちも数知れず、その中から特に人気のある超人たちを厳選して700体に絞り込みました。これら超人を、一般の図鑑と同じように「魚類の仲間」「哺乳類の仲間」「乗り物の仲間」というように35種類に絞り込み掲載することにしました。
また、オリジナルのコミックでは線画だった超人たちを、顔の表情から筋肉、物質感までもリアルに描き彩色するために、15人のイラストレーターを揃え、息子が700体それぞれに対して最終イメージを指示し、15人のイラストレーターの最終イメージが統一されるようにしました。こうして出来上がった超人たちを最終的には原作者の承認を得て図鑑に取り込みます。

こうして出版準備の整ったキン肉マンは、販売活動開始後すぐに、アマゾンの予約段階で申込数3万部を超えて、図鑑ながら一般書を凌駕して予約部数一位に躍り出ました。
4月20付けの読売新聞では写真入りで「超人図鑑」人気スパークとの題名の元、「「漫画キン肉マン」の連載開始から40年に合わせ,作品に登場する約700体の「超人」解説した図鑑が、来月の発売を前に中高年ファンの注目を集めている。通販サイトに予約が殺到し、初回の刷り部数を急きょ増やす事態になっている。」などと詳報されました。
こうして市場調査結果、40代のオールドファンを中心に需要が沸騰すると読んで初版数は図鑑の常識を破る10万部と決定しました。
こうなってくると、朝日新聞も6月23日の文化・文芸欄で
「恐竜」「動物」などでおなじみの学研の図鑑では体裁は其のままに、マンガ「キン肉マン」のキャラクターを図鑑にした。作品が大ヒットしたころに子供だった30代~40代の男性を中心に人気を集めている。5月の発売前に予約が殺到、それを受けて同社の通常の図鑑の4倍近い10万部を発行した。と報じられました。

集英社の「週刊プレーボーイ」6月3日号では、「祝!昭和、平成、令和を駆け抜け連載40周年 キン肉マン総力祭り」を発行、その記事の中に、集英社と学研という会社の垣根を越えて大見出しで次のように唱っています。

図鑑として異例の初版10万部!
「学研の図鑑 キン肉マン「超人」」の制作リーダーは、なんと”超人募集“の採用者だった!
芳賀靖彦・・・・・と実名と写真入りで見開き4頁の記事を掲載してくれました。

こうなってくると、テレビの方も放っては置かず、「超人図鑑」がオリコン1位になったのをきっかけに早朝のワイドショーで3社が取り上げを決定、息子からの連絡を受けて私もビデオ録画の準備をしていたところ、突如として山里亮太・蒼井優の結婚報告ニュースが飛び込んできて、テレビ2社のキン肉マン報道はすっ飛んでしまいました。別の日にキン肉マン報道を予定していた一社だけ、息子の顔入りで報道してくれました。またラジオ局からのインタビューも実現しました。

あれから数か月、キン肉マン報道も鎮火してしまいました、息子からの連絡では相変わらず売れ行き好調とのこと。
親としてホット一息ついているところです。